『ふしぎ遊戯 玄武開伝』は2003年11月に発売された人気漫画。
四神天地書という経典が軸となるファンタジー物語です。
ふしぎ遊戯(朱雀編)のエピソード1ともいえる作品。
前作を読んでいる人はより楽しめる内容となっています。
そんな『ふしぎ遊戯 玄武開伝』のあらすじについて
感想を交えながらご紹介します。
今回ご紹介するのは第1巻。
主人公、多喜子が異世界の扉を開くはじまりの物語です。
ふしぎ遊戯玄武開伝1巻のあらすじをネタバレ!
大正12年、盛岡。
母の結核療養のため、主人公・奥田多喜子は東京から母の実家の盛岡に越してきました。
女学生として生活を送る中、東京からやってきたこと、父が作家であることから何かと嫌味を言われることの多い多喜子でしたが、持ち前の快活さで毎日をやり過ごしていました。
そんな折、仕事で長らく不在だった父・永之助がふらりと家に戻ってきます。
帰ってくるなり母の看病もせず書斎で本作りに没頭する永之助。
そんな父の姿に多喜子は苛立ちを隠せませんでした。
ある日、多喜子は父の親友である大杉から、大杉の娘・鈴乃の写真を見せてもらいます。
そこには幸せそうに写る笑顔の鈴乃が写っていました。
父親から大事に思われているのが伝わってくる一枚の写真。
自分とは違う、父親に愛されている、と多喜子はうらやましく思います。
多喜子は父が娘ではなく息子を望んでいたことを知っていたため、「自分は必要とされていない」という思いがいつもつきまとっていたのです。
大杉と一緒に帰宅すると慌ててばあやが駆け寄ってきます。
母・美江が息を引き取ったのです。
悲しみでいっぱいになった多喜子は、母をほったらかしにしていた父をなじり、家を飛び出します。
後を追いかけた大杉に長年の想いを告げる多喜子でしたが、大杉は妻子持ちの身。
すぐに冷静さを取り戻し多喜子は家に戻ります。
母の葬式の準備にも参加せず本に没頭する父に怒りがおさまらない多喜子。
話を聞こうともしない父の手から本を取り上げます。
それは永之助が中国の経典を訳した『四神天地書』でした。
怒りにまかせ破ろうとした瞬間、四神天地書は光を放ち、多喜子を本の中へ吸い込みます。
物語はこうして始まりを告げたのでした。
* * * * *
本に吸い込まれ北甲国に降り立った多喜子はそこで山の中で磔にされていた『少女』と出会います。
少女の名はリムド。
元々は男性でしたが、胸元に『女』の文字が現れる時のみ女性の体になって風を操る能力を持っていました。
リムドからどこから来たのかと問われ、思わず四神天地書とつぶやく多喜子。
驚くリムドから玄武の巫女について聞かされます。
国が滅びようとする時に異界から現れる伝説の娘。
巫女は玄武七星士を集め玄武を召喚し、あらゆる願いを叶える力を得て国を救う。
本の中の世界に取り込まれてしまったのではないかと気づきはじめていた多喜子は我関せずの態度で通します。
妙なことに巻き込まれてしまっては困るからです。
そう考えていた矢先、多喜子は騒動に巻き込まれます。
リムドは一千両がかけられている賞金首だったのです。
そんなリムドを賞金稼ぎの少年・チャムカが追ってきます。
警吏に取り囲まれてしまい、逃げ場を失った多喜子の体から銀の光が放たれます。
その光は現実世界で四神天地書を手にしていた永之助の元にも届いていました。
多喜子は本の中にいる。
永之助も多喜子もお互いにそのことを認識した瞬間でした。
リムドは逃走し、残された多喜子はリムドをおびき寄せる人質として捕らえられますが、チャムカの母・ボラーテによって解放されます。
多くの人が滅びの象徴として恐れていた玄武の巫女と七星士の伝説。
ですがボラーテは玄武の巫女が現れてこの北甲国を救ってくれると信じていました。
なぜなら、息子であるチャムカが七星士の証である『虚』の字を持っていたからです。
字を持っているチャムカ本人はその伝説をけむたがっていましたが、銀の光を放った多喜子が玄武の巫女ではないかと気づいてしまいます。
それから多喜子は玄武の巫女としてあれよあれよとチャムカの村で接待を受ける羽目に。
すぐに元の世界に帰るつもりだった多喜子は戸惑います。
でも、この村の人達は自分のことを必要としてくれている。
そのことが多喜子には何よりも嬉しいことだったのです。
自信なんてない。
けれど自分も何か誰かの役に立てるかもしれない。
誰かに、必要とされるかもしれない。
そうした思いを胸に玄武の巫女になることを決心した多喜子はチャムカと共に七星士探しの旅を始めるのでした。
ふしぎ遊戯玄武開伝1巻の考察感想まとめ
ふしぎ遊戯玄武開伝1巻は多喜子が本に吸い込まれて玄武の巫女になることを決心するまでが主に描かれています。
全てのはじまりともいえるふしぎ遊戯エピソード1。
残る、白虎、青龍、朱雀の巫女の先駆けとなる重要な物語です。
前作の主人公である美朱は国を救ってくれる『朱雀の巫女』ともてはやされてましたが、多喜子の場合は国の滅びの前兆として『玄武の巫女』は七星士の存在共々恐れられていました。
先駆者はいつの時代も大変な思いをするものなんですね…。
さっそく七星士のひとり、チャムカとの出会いを果たした多喜子。
偶然のようで運命に導かれている感じがしますね。
もっと詳しく読みたい人はぜひ漫画版をチェックしてみてください!
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多喜子は気丈に振舞っている女の子ですが、その強さの裏に弱さや脆さを持っている気がします。
父は家に居らず、母は病に伏せていて誰にも頼れない。
そんな多喜子に優しくしてくれる大杉の存在は大きかったと思われます。
残念ながら恋破れてしまいましたけど…妻子持ちだから仕方ないですね。
母は亡くなり、好きな人も遠ざかる。
元の世界に戻っても、自分には何もない。
そんな思いがあったからこそ、本の中に残る決意をしたのでしょうね。
本の中の存在でも、自分を必要としてくれる人たちがいたから。
父親に疎まれていると思っていた多喜子にとっては十分な理由です。
右も左もわからない世界で歩き出した多喜子。
四神天地書に選ばれた最初の巫女の物語をぜひ楽しんでみてください。